QC連載記事 : はじめに – すべては品質のために

撮影データが収録されたカメラカードはDITカートでオフロードされ、Silversatckで品質チェックが行われます。
映画制作において品質管理(QC)は、技術面での完全性を目指すだけでなく、意図された映像表現を達成するための命綱であり、業界標準や規定を満たすことでコラボレーションを円滑にし、最終的には観客の共感を呼ぶ作品を送り届けることにあります。QCは映画の成功と制作コスト管理に重要な役割を果たします。QCは映画制作のあらゆるプロセスを通じて、常に不可欠な部分として、カメラや機材のチェックなどといったプリプロダクション段階 から、メインプロダクション(デイリー映像のチェック)、編集および最終ポストプロダクションの最終段階にまで及びます。

しかしながら単に品質をチェックするだけでは品質を管理するのに十分ではありません。検出された問題に効果的に対処できるように、業界標準の方法と専用ツールを使用して適切に文書化しておく必要があります。このプロセスを標準化することで、QCの各問題の理解が簡素化され、より効率的なワークフローが実現します。

Pomfortのソフトウェアは撮影現場(オンセット)または撮影現場に近い場所(ニアセット)で使用されているため、この記事シリーズではメインプロダクション段階に焦点を当て、日々の撮影での品質管理におけるQCエラーの特定から文書化してレポートするまでのSilverstackの機能の使用方法を解説します。また、Netflixが提唱する制作QC用語集についても検討します。この用語集は、QC問題を議論するために使用される言語を標準化し、Silverstackの機能で活用する方法を解説します。

映画撮影時の品質管理

映画制作全体を通じて、QC問題を見落としたせいで再撮影が発生したり、ポストプロダクションや納品の費用が予想外に膨らんだり、神経をすり減らすような保険金請求の原因となる場合があります。だからこそ、撮影現場または撮影現場の近くで可能な限り早期の段階でエラーを洗い出したいのです。Netflixは次のように述べています[1]。

各種QCのなかでも、特に撮影段階での品質管理(QC)が、最も商業面でクリティカルと言えるでしょう。これは映画制作の下流工程で発見され得る問題にあらかじめフラグを立てておく最初の機会となります。

大規模な映画制作での効率を最大化するには、自動化と合理化されたワークフローに加え、スタッフ、ベンダー、クルーまでのすべての関係者にわたる効率的なグローバルコラボレーションが必要です。コラボレーションを成功させるには、認識可能な一貫した共通用語を使用してQCノートを迅速かつ正確に伝達することが必要です

Netflix

Netflixは、制作QCを3つの段階で区別することを推奨しています。1.オフロード中の撮影元素材ファイルの目視検査、2.フルQC、3.編集ラッシュのサインオフです。 各段階で個別の専任スタッフまたは専任チームが担当することでベストプラクティスが実現できます。

長い歴史の中で映画撮影の品質管理に特化した共通の用語が統一されなかったことが、コミュニケーションや効率的なワークフローの確立を妨げてきました。この問題を解決するためにNetflixは標準化されたプロダクションQC用語集と、QC問題を言語化するための専用の分類法を提案しました。PomfortのSilverstack製品ファミリーにも活用することでQC問題を特定、追跡、レポートするのに役立ちます。

NETFLIXプロダクションQCコード用語集 

効率的なコラボレーションには、正確かつ明確なコミュニケーションが必要です。 Netflix制作QC用語集の導入により、一貫したQC用語の普及が促進され、撮影現場から試写デイリーラボ、編集、制作、そして最終的にポストプロダクションに至るまでの関係者全員が統一された同じ言葉で問題を議論できるようになります。

Netflix は、世界的な試写デイリーの専門家からなる業界団体と協力して実務者への聞き取り調査を実施して、普遍的な制作品質管理用語集を策定しました。この用語集は、タイプ、場所、規模に関係なく、すべてのプロジェクトに適用される標準化された分類法による「QC エラー」を網羅したデータベースで構成されています。

各QCエラーは、「焦点が合っていない」などの明確なタイトル、「焦点が理想的な被写界深度の外側に長時間留まっている」などの説明、および定義された分類法による固有のコードとともにリストされます。 「焦点が合っていない」場合のコードは「C-201」になります。

“C” は部門を意味します “Camera”(カメラ)
“2” はサブカテゴリを意味します “Focus issues”(フォーカス問題)
“01” は “Out of focus”(ピント外れ)を意味するエラーコードです。

この符号化されたコードでは、さらに高度な構造も定義されており、
たとえば次の文字列は下記のように分解して読み取ることができます。
「C-201:?TR#A[09:10:22:03-09:10:23:10],」

“?TR” – エラーが画面の右上(T:トップ R:ライト)位置に発生している
“#A” – 深刻度のレベル
“[09:10:22:03-09:10:23:10]“- タイムコード

機械的に読み取れるコード化規則により、コードをパイプラインを構成する機器に送信して特定のワークフローや自動処理を開始したり、各種担当部門に対して特定のアラートを自動トリガーできます。コード用語集と分類法の詳細については、Netflix のパートナーヘルプセンターをご参照ください[2]。

便利なQCエラーコードの例を挙げます:

Visible production crew: M-302 – クルーがテイク内に映っている
Boom in shot: M-401 – テイク内にブームマイクが映っている
Visible production equipment: M-400_096 – 撮影機材がショットに映っている
Lens flare: C-405_085 – レンズフレアが発生している
Generic Exposure Issues: C-100 – ショット中の一部または全体で露出オーバーまたは露出アンダーが発生している
Corrupted Codec: I-701_078 – コーデック破損によりファイルが読み取れない

SilverstackのQC関連機能

Silverstackの第一歩はオフロードに始まります。オリジナルのカメラネガ(OCN)ファイルをコピーする際のデータの整合性の保証は品質管理の根幹となります。この側面については、チェックサム検証や3:2:1バックアップの原則など、広く受け入れられているベストプラクティスがあります [3]。Silverstack製品ファミリーは、合理化されたワークフローでQCを簡単に実施するためのツールボックスを提供します。このトピックの詳細については、関連するブログ記事[4]とナレッジベース[5]をご参照ください。

バックアップの実行中でも映像がライブラリに登録されてさえいればコンテンツの精査を開始できます。Silverstackは主要カメラフォーマットのネイテイブ再生が可能です (一部のRAWフォーマットではSilverstack XT以上が必要)。直感的なプレイバック[6]コントロールでは個別のクリップだけでなく、複数のクリップ間を簡単に移動できます。Silverstack XTおよびLabの4k-SDI出力[7] は放送用モニターでの再生に対応します。より詳細な検査については、ビジュアルコントロール[8]機能をチェックしてみるとよいでしょう。ただし、その一部についてはこのシリーズの後半の記事で解説しますので、ご安心ください。

QCを洗い出した内容は、影響を受けるクリップに関連付けられたQC結果をSilverstackライブラリに保存できます。ユーザー情報タブ[9]では、評点、コメント、タグ、キューポイントをすべて再生ウィンドウの近くの1か所で追加できます。キューポイントは分類でき、クリップの特定のタイムコードまたはタイムコード範囲についてコメント (前述のQC用語集の活用が理想的です) できるため、QC エラーを文書化する場合に特に利用価値が高いでしょう。 クイック入力 [10] メニューの利用や、キーボードショートカットをカスタマイズして[11]を定義したり、重要なコマンド群をStream Deck[12]デバイスに連動するように設定することで作業を高速化できます。

QCエラーのなかには単一のクリップだけが対象と限らない場合があります。Silverstackはすべてのクリップからメタデータを自動的に抽出するため、ライブラリを使用して相関関係を追跡し、影響を受ける他のクリップを見つけることができます。たとえば特定されたビジュアルエラーが減光フィルターまたはレンズの傷に由来するものであると仮定するとします。Silverstackのテーブルビュー [13] のメタデータ列をすばやく調整して、レンズのシリアル番号とNDフィルター値を表示し、この情報を関連セットアップで撮影したクリップに使用して、影響を受ける可能性のある他のクリップを特定することができます。 特定のメタデータ [14] でライブラリ全体をフィルタリングし複合的なフィルタ条件を作成して、特定のカメラと特定のNDフィルタで撮影されたクリップのみをリスト表示することもできます。

品質チェックが完了したら、次はレポート作業です。Netflixは「QCメモが下流の制作工程に届かない場合、QCメモからのメリットはありません」と断言しています。 QCエラー用語集を使用して調査結果を文書化すれば、たった2クリックで標準化されたQCレポートが作成されます。QCノートを下流工程に渡すベストプラクティスは、カスタマイズ可能なクリップレポートです[15]。問題を文書化するために使用したフィールド (「キューポイント」列など) をレポートレイアウトに必ず含めるようにするだけで、それらの項目がつねに漏らすことなくPDFに表示されます。またQCノートを ALE、XML、CSV などの他のアプリケーションへのエクスチェンジフォーマット [16] に含めて後続の各工程を通じて制作効率を最大限に高めることができます。

まとめ・次回予告

映画撮影段階での品質管理は時間とコストを節約するうえで非常に重要です。効率的なワークフローの実現には問題の早期発見と明確な伝達が欠かせません。Silverstackは、QC上の問題を特定、文書化、報告するための包括的なツールセットを備えており、Netflixからは異なる部門を超えて問題を文書化して議論するための共通言語となるのQCエラー用語集が提唱されています。

本連載の次回では、Silverstackの優れた露出検査ツールと、QCへの応用を徹底的に検証します。

[1] Netflix QC用語イントロダクション

[2] Netflix パートナーヘルプセンター

[3] The 3:2:1バックアップ原則

[4] 関連ブログ記事

[5] ナレッジベース

[6] プレイバックコントロール

[7] 4k-SDI出力

[8] ビジュアルコントロール

[9] ユーザー情報タブ

[10] クイックエントリー

[11] キーボード・ショートカット

[12] Stream Deck

[13] テーブルビュー

[14] 特定のメタデータを使ったライブラリ全体のフィルタリング

[15] カスタマイズ可能なクリップレポート

[16]エクスチェンジフォーマット


その他の記事

次回の連載までに各種関連記事をご参照ください。

執筆者について
Franzはメディアマネジメント製品のプロダクトマネージャーです。映画業界での幅広い経験とITのバックグラウンドを併せ持つFranzは、ワークフローのさらなる円滑化とユーザーエクスペリエンスを一貫していて説明不要なものにするために熱意を燃やしています。

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