Livegradeの典型的な運用例をマスターする

複雑な要求と短時間での準備を強いられる撮影では、撮影現場への適応能力が鍵となります。多機能なアプリケーションであるLivegrade Pro / Studioには、カラーとルックのパイプラインを各種機器と連携動作させる手段が無数に用意されています。連携機能を駆使できれば撮影現場で強力な柔軟性と適応力を発揮できますが、その多機能さゆえに豊富な機能のひとつひとつを使いこなすにはDITの多岐にわたる知識が必要です。

連携機能をマスターして撮影現場での適応力を身につけられるように、Livegrade Pro/Studioの典型的な運用シーンへの対処法をユーザーから寄せられた質問をもとに導き出しました。さらに本稿の最後にはPomfortからのサポートをできるだけ早く受けられるように、サポート要請のベストプラクティスも紹介します。

それでは始めましょう。

Livegradeの初期設定のベストプラクティス

Livegradeの最もシンプルな機器構成は、おそらくラップトップ1台とカメラ1台の組み合わせでしょう。実際の一般的な組み合わせでは、さらにキャプチャデバイス、グレーディング結果チェック用のリファレンスモニター、さらに撮影監督用にLUTボックスを備えた別のモニターが追加されます。1カメ撮影で、他のスタッフがグレーディング結果を見る必要がない場合によくある機材構成です。

ほぼ最小構成と言える機器構成ですら、オペレーターは次のデバイスに注意を払う必要があります。

  • Livegradeを動作させるコンピューター
  • カメラ
  • モニター2台
  • キャプチャデバイス
  • LUTボックス

これらのデバイスが適切に機能することを確認するために、初期セットアップのベストプラクティスを見てみましょう。

  • 運用環境を構築するにはPomfortが推奨する機器構成例を参照してください。
  • お使いのデバイスの互換性についてはナレッジベースを参照してください。
  • ワークフローに必要のないアプリケーションを終了します。
  • コンピューターの最新のアップデートとドライバーを確認します。
  • 各デバイスやカメラの最新ファームウェアを確認します。
  • Livegradeが最新バージョンであるかを確認します。
  • 可能な限りハブ経由の接続を避け、デバイスをコンピュータに直接接続します。
  • ラップトップの電源は内蔵バッテリーではなく外部電源から電力を供給します。
  • チェーン内の1つのリンクを更新または変更した後、LUTボックスとキャプチャデバイスの電源を入れ直します。

これらの手順を慎重に実施することで撮影全体を通じてライブグレーディングを運用するための盤石な体制が整います。次は運用中に遭遇する可能性のあるいくつかの一般的な問題を見てみましょう。

「Livegradeがメタデータを受信しません」

メタデータの受信はカメラとの通信の基礎的な機能です。SDIビデオ信号に含まれる録画フラグを読み取ることで自動収録を実現しつつ、信号に含まれて送られるメタデータは、ショットライブラリの円滑な維持に役立ちます。この貴重なメタデータは制作の後続工程でも確実にアクセスできるようになります。

Livegrade Pro / Studioで自動録画がトリガーされない、または重要なデータが正しく到着しないという状況が発生した場合は、たいていメタデータが適切に受信されていないことを示しています。この問題の一般的な対処法の例を挙げます。 

  • カメラの種類を設定してみます。ANCメタデータは各種カメラから送信されますが、カメラごとに似通っているものの、送信方法はそれぞれ少し異なるので[キャプチャ デバイスの追加] ダイアログで適切なカメラタイプが選択されているかを確認することが重要です。
  • 接続はできる限りケーブルを使用し、ワイヤレス送信機を排除します。一般的にワイヤレス送信機はビデオ信号からメタデータを削除します。ただし送信プロセス中にANCメタデータをサポートするデバイス (Teradek Bolt XT など) が一部存在します。ワイヤレス送信を使用する場合は、WIFI経由でのメタデータの通信に対応した一部のカメラを利用することもできます。イーサネットやWi-Fi経由で接続されたARRIカメラを追加する場合、「グレーディング」 > 「無効 (メタデータのみ)」を選択して、カメラをメタデータ専用デバイスとして追加します (他のグレーディング モードでも利用可能)。

ほとんどの場合、上記の手順により、すべてのデータが正しく送信されるはずです。それにもかかわらず、このメタデータの小さいながらも重要な部分には特別な注意を払う必要があります。それは、自動記録を使用することが不可欠である記録フラグです。それでは、それについて詳しく見てみましょう。

収録フラグは通常、SDIビデオ信号の一部として水平補助データ (HANC) 内で送信されます。Arri、Red、または Sonyカメラで撮影する場合は、通常、[キャプチャデバイスの追加] ダイアログ内で [水平ANC記録フラグ]を選択します。ただし、すべてのキャプチャデバイスがHNCに対応しているわけではないので、収録フラグは渡されません。

キャプチャデバイスとカメラに応じて、次の4つの収録トリガーを選択します。

  • 水平ANCメタデータ (HANC) : AJAキャプチャデバイスとARRI、Red、SONYカメラにはこのオプションを選択します。
  • 垂直ANCメタデータ (VANC) : BlackmagicキャプチャデバイスはHANCメタデータを引き渡さないため、旧式のARRIカメラとBlackmagicデバイスでの撮影には、このオプションが良い選択となる可能性があります。注 : 新しいARRIカメラは、VANCメタデータ内にレコードフラグを持ちません。
  • RecRunタイムコード : 上記の選択肢が撮影機材構成に適しない場合には、カメラのタイムコードを「RecRun」に設定し、このオプションを使用して収録を自動トリガーできます。
  • 無効 : 自動収録が必要ない、またはできない環境では、無効に指定します。

それでも一部のメタデータが足りないと感じられる場合は、PomfortにSDIのRAW信号を収録してトラブルシューティングの依頼をしてください。

「映像がLUTを2重に適用したように見える」

ほとんどの場合、SDI経由でカメラから直接受信したlogエンコードの映像をLivegrade Pro / Studio上でカラーコレクションをすることになります。グレーディング作業を開始する基礎固めの段階は、一般的にベンダーLUTやShow LUTをのっぺりしたグレーディング前の映像に適用して映像を改善するところから始まります。グレーディング結果は(適用されたLUTを含めて)LUTボックス等のデバイスに送信されてlog映像に適用されます。さらにLUTボックスのSDI出力に接続されたモニターに結果の映像が表示されます。

ただし、カメラまたは LUT ボックスのグレーディング出力をキャプチャする場合など、グレーディング イメージをキャプチャする必要がある状況も考えられます。このような場合、受信 SDI 信号が「グレーディング」されていることを Livegrade に伝える必要があります。

ですので「キャプチャデバイスの追加」ダイアログ内には次のオプションがあります。

グレーディングされていない信号をキャプチャすることで柔軟性が最大化

通常ではグレードされていないlog信号を扱うため、Livegradeの運用例では「ダイレクトカメラ出力」が最も一般的なキャプチャソース設定です。Livegradeの諸機能を活用するには、この方法でグレーディングするようにワークフローを組むことを強くお勧めします。 

グレーディングされた信号がキャプチャデバイスに入力された状態でキャプチャソースを「ダイレクトカメラ出力」に設定した場合、グレーディング内のLUTはすでにグレーディングされた画像に適用されるため、LUTが2重に適用されたように見えます。このような場合は他のオプションを選択するか、設定の変更を検討しなければなりません。

必要に応じてグレーディング済みの信号をキャプチャする

キャプチャデバイスに「グレード済み」信号が入力されている場合は、キャプチャソースを必ず「LUT ボックス出力 (グレード済み)」に設定してください。 

映像の調整加工、編集の余地が制限されるため、Pomfortはこの方法での作業はお勧めしません。キャプチャソースが「グレード済み」に設定されている場合には、次のような制約が発生します。

  • 画像を置き換えた場合のみルックが更新されます
  • 収録済みムービーでルックを更新できません
  • 静止画は編集できません。

「画像の輝度値が期待通りになりません」

画像が平坦すぎる、あるいはコントラストが強すぎる場合は、通常フルレンジまたはリーガルレンジの問題を示しています。これはLivegrade Pro/Studioに映像がフルレンジで送信されているのに、リーガルレンジである解釈されるためです。したがって扱っている信号がフルレンジかリーガルレンジであるかを常に意識する必要があります。

通常ではカメラからの出力はリーガルレンジであるため、Livegrade Pro/Studio、LUT ボックス、キャプチャおよび出力デバイスの設定も「リーガル」に合わせて設定する必要があります。

ただし、たとえばソニーのカメラはフルレンジ信号の出力も可能です。このような場合はチェーン内のすべてのリンクに受信信号がフルレンジであることを確実に伝える必要があります。次に例を挙げます:

  • Livegradeのキャプチャデバイスを「フルレンジ」に設定します。これは「キャプチャデバイスの追加」ダイアログ内の「デコードレベル」オプションで設定できます。
  • LUT ボックスの入力設定をフルに変更し、(通常はリーガルの映像を渡したいため) 出力設定をリーガルに変更します。
  • 99%の確率でモニターもリーガルに設定されるため、ビデオ出力デバイスは「リーガル」に設定する必要があります。これを行うには、ライブグレード設定のビデオタブに移動し、「レベル」オプションを「リーガルレンジ」に設定します。

映像信号レンジについての詳細については関連ブログ記事を参照ください。 

「LUTボックスが頻繁に切断される」

LUTボックスの多くがイーサネットまたは Wi-Fiで接続されるため問題が発生することがあります。 

LUT ボックスをデバイスとしてスロットに追加できない場合や、接続が安定しない場合の対処例を挙げます。

  • ケーブルでの有線接続を使用し、無線接続を排除します。各構成機材の他のすべての接続と同様に昔ながらの有線接続が確実で信頼性が高くなります。
  • 最新のアップデートをインストールします。コンピュータに最新のドライババージョンがインストールされ、LUTボックスに最新のファームウェアがインストールされ、Livegrade が最新であることを確認してください。
  • コンピュータがLUTボックスと同一のネットワークにあることを確認してください。ネットワーク環境にスイッチが使用されている場合もあります。他にもWiFiネットワークがいくつかある可能性があるため、コンピュータとLUTボックスが同じネットワーク上にあることを再確認してください。
  • デバイスの電源を入れ直します。ネットワークスイッチとLUTボックスの電源をオフにして再度オンにすると内部メモリが空になり、デバイスは準備完了状態に戻ります。これが驚くほどうまくいきます。

それでも接続に問題がある場合は次の記事を参照してPomfortにサポート要請を依頼してください。

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「操作用の物理パネルが動作しない」

この記事の公開時点で、LivegradeはTangent製のすべてのグレーディングパネルをサポートしています。最新のTangent Mapperソフトウェアをお持ちであれば問題なく使用できます。

ただしLivegradeでグレーディングパネルを使用するときは、常に2つの事項に留意してください。

  • パネルにはLivegradeと色と光の情報のみを伝達し、設定の変更に関する情報は伝達しません。これは、グレーディングパネルやLivegradeなどでそれぞれ設定の変更が必要であるkとを意味します。たとえばCDLからLGGに必ず変更する必要があることを意味します。これを忘れた場合、パネルはLGG モードになりますが、Livegradeでは引き続きCDLコントロールが表示されます。

とは言うものの、特に過度な心配する必要はありません。

  • 技術的には、CDLノード内のすべての変更は同じ値にアクセスします。値はモードごとに表示方法が異なるだけです。CDL、LGG、PRT、またはSPL表現形式のいずれかになります。したがってLGGの変更は常にCDL、PRT、 SPLでの変更に影響します。

「別のアプリケーションを開くとSDI信号が出力されません」

ワークフローによっては、SDIで出力された映像を複数のアプリケーションで確認する必要があります。一応機能はしますが、複数のアプリケーションで単一の出力デバイスを使用すると問題を引き起こす原因となることに注意してください。

アプリケーションごとに 1 つの出力デバイスを使用する

SDI信号を出力する2つ以上のアプリケーションを同時に操作するには、アプリケーションごとに1つの出力デバイスを使用することをおすすめします。

他のアプリケーションからのSDIビデオ出力を無効にする

複数のアプリケーションに対して1つの出力デバイスがバインドされている場合は、使用していないすべてのアプリケーションでSDIビデオ出力を無効にしてください。

他のアプリケーションを終了する/コンピュータを再起動する

アプリケーションでビデオ出力を手動で無効にしてもSDI信号の出力にまだ問題がある場合には、共有している出力デバイスにアクセスする可能性のあるすべてのアプリケーションを終了する必要があります。

それでも改善しない場合は、コンピューターを再起動して出力デバイスの電源を入れ直すことですべてのアプリケーションが新たに開始されます。

サポート要請のベストプラクティス

最後にPomfortからのサポートが必要な場合に備えて、簡単なチェックリストをお伝えします。このチェックリストは、できるだけ早く通常通りの作業を継続できるようにすることを目的としています。

  • Pomfortのナレッジベースを今一度ご確認ください。お使いの検索エンジンで「Pomfort <問題の内容>」を検索するとナレッジベースのなかから候補が表示されます。).
    • Pomfortのナレッジベースはウェブサイトのメニュー > Knowledge Baseからアクセスも可能です。
  • サポートに問い合わせる -> 可能であればサポートに連絡してください。Livegradeの問い合わせフォームからご連絡いただくと、問題を簡単に特定することができます。
  • お使いの各機器の名称を伝え、Pomfort側で症状の再現ができるように問題を詳しく説明してください。
  • サポート要請フォームにチェックを入れてLivegradeライブラリを送信します。ライブラリを送信することでPomfort側でユーザーの現象を簡単にシミュレーションできます。
  • 画面と音声を保存します。長い文章よりも、問題を説明した画面の録画のほうがユーザーとサポート側の双方にとってより簡単な場合もあります。

まとめ

この記事を踏まえて、次の仕事に取り組むことができるはずです。各種ソリューションの多くが似通った構造を持っています。チェーン内のすべてのリンクを最新の状態にし、可能な限り有線の直接接続を使用し、撮影前に構成機器と設定を適切にテストすることが良い出発点となります。最終的にはデバイスの動作と、電源を入れ直さないと何が起こるかを理解しようとすることが常に役に立ちます。

執筆者について
ルーカスはPomfortのオンセットシステムのプロダクトマネージャー。数年にわたりアシスタントカメラマンやファイナルカラリストとして働いてきた彼は、撮影現場とポストプロダクションの知識を兼ね備え、クリエイターがビジョンを実現するためのあらゆることに鋭い目を持っている。

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